「ノーリフト・ノーリフティング」の発祥
オーストラリア発信のケアメソッド
かつて、オーストラリアでは看護師の身体疲労による腰痛訴え率が上がり、離職者が増えて深刻な看護師不足に陥りました。そこでオーストラリア看護連盟が看護師の腰痛予防対策として1998年にノーリフト®をスタートさせたことに端を発します。
人力のみの移乗を禁止し、患者さんの自立度を考慮して福祉用具を活用しようという考え方です。
ここ日本でも看護師・介護労働者の腰痛が多発しているのが実情です。安全で安心な看護・介護を提供するには、病院や施設で患者さんの状態に合わせて福祉用具を有効に活用し、介助者の腰痛予防にも取り組むことが不可欠です。
ノーリフト・ノーリフティング導入で低減した腰痛
オーストラリア全土にノーリフト・ノーリフティングが導入され、
導入後は労災申請数・労災申請に伴う費用が低減しています。
日本における腰痛の現状
日本における看護・介護現場の腰痛発生の実情
看護・介護に就いてから、体に痛み・違和感を感じたことがある人が7割を超えているのが実情です。「腰痛をもって一人前」との認識もあるほどです。
このままでは、ますます人材不足に
製造業をはじめ他の業界は、様々な取り組みにより業務上腰痛件数が減少しているにも関わらず、保健・衛生業だけが増加傾向にあるのが実態です。腰痛が原因で離職を余儀なくされるケースもあり、介護職の人材確保という面からも対応が急がれます。
腰痛の原因となっている“人力”による移乗
日本における腰痛予防対策指針
2013年に国の「職場における腰痛予防対策指針」が改定され、『人力での抱え上げは、原則行わせない。リフトなど福祉機器の活用を促す』ことが明示されました。
これまでの日本の腰痛予防策では、重量物の制限はあっても、「人力による人の抱え上げ」は除外されてきた経緯があり、今も多くの事業所で人力による抱え上げが行われているのが実情です。
腰痛予防は職員個人の努力やケアに頼るだけでは限界があります。
事業者側にも職員の腰痛を低減させるための責任と高い意識が望まれています。
「ノーリフティング」から「ノーリフティングケア」へ
日本でノーリフティングを活用し実現するケア品質の向上
私たちは2008年ごろから日本国内でノーリフティングの活動を開始し、ノーリフティングを実施するとケアの質(褥瘡や拘縮予防)そのものが変わることがわかりました。
そのため日本ノーリフト協会は、日本の病院や施設での腰痛予防対策を成功事例とした労働安全衛生マネジメントの構築と、拘縮や褥瘡を予防するためのケアの質の向上(寝かせきりゼロ)を目的に「ノーリフティングケア」という愛♡言葉を使用し活動しています。
「ノーリフティングケア 〜ケアを変える腰痛予防対策〜」で、看護・介護・福祉の現場から職業病としての腰痛をなくしましょう。
介助される人の自立につなげる
自立のチャンスを逃すことも
医療や介護の現場において、機械ではなく「人の手が何よりも大切だ」と長年考えられてきました。しかし、人力による移乗では、介助される人は抱え上げられるときに身構えてしまい、全身のこわばりの原因となることがあります。
また、無理な抱え上げは人間の持つ自然な動きをさえぎっていることが多く、介助される人の自立度を奪ってしまうことがあります。
人力ではなくリフトを使って体をおこすことで、視界が変わり、自立への意識が高まる効果もあります。